【完全版】遺産相続でやること全部まとめ|この順序でやれば間違いない!資産別の税金と手続き一覧
「親が亡くなったけど、何から手をつければいいのか全くわからない」「相続税って自分には関係ない?それとも払わないといけない?」――そんな疑問を抱えたまま時間だけが過ぎていく、というケースが非常に多いのが相続の現実です。
相続には期限があります。3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月と、それぞれやることが決まっていて、期限を過ぎると罰則や余分な税金がかかることもあります。でも、落ち着いて順序よく進めれば、必ず解決できます。
この記事では、現金・預貯金から株・土地・金・高級時計・ビットコインまで、あらゆる資産の相続税と手続きを、この記事一本で全部わかるようにまとめました。難しい法律用語はできるだけ使わず、高齢の方にも読みやすい言葉で解説します。
まず知っておきたい|日本の親世代はどれくらいの資産を持っているのか
70代の平均資産は2,000万円超・中央値は約1,000〜1,200万円
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の2025年の調査によると、70代の金融資産(貯金・株・保険など)の平均は約2,117万円です。ただしこれは一部の資産家が平均を引き上げているため、実態に近い「中央値」で見ると、二人以上世帯で約1,178万円、単身世帯で約500万円となっています。
さらに重要なのが、金融資産以外の資産です。70歳以上の世帯の約9割が持ち家に住んでいるとされており、土地・建物を含めた総資産はこれより大幅に大きくなります。「うちはそんなに財産ない」と思っていても、土地が入ると基礎控除を超えるケースは珍しくありません。
「うちは相続税関係ない」は要注意
相続税には「基礎控除」という非課税枠があります。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合:
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
遺産の合計がこの金額以下であれば、相続税はゼロです。しかし土地の評価額を加えると意外と超えるケースも多く、「自分たちは大丈夫」と思い込んで確認しないのが最も危険です。
まず最初に確認すること|相続の3つの選択肢
親が亡くなったら3ヶ月以内に必ず決める
相続には「どう受け取るか」の選択があります。何も手続きしないと自動的に「単純承認」になるため、借金も全部引き継ぐことになります。
- 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産(借金)も全部引き継ぐ。何もしないと自動的にこれになる
- 相続放棄:財産も借金も一切受け取らない。家庭裁判所に3ヶ月以内に申請が必要
- 限定承認:プラスの財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐ。相続人全員で申請が必要
親に借金があるかどうかわからない場合は、信用情報機関への照会や弁護士への相談を早めに行いましょう。
「この順序でやれば間違いない」手続きの流れ
死亡直後〜1週間以内にやること
- 死亡診断書を受け取る(病院または警察から)
- 死亡届を役所に提出(7日以内。葬儀社が代行してくれることが多い)
- 火葬許可証を取得(死亡届提出時に同時手続き)
- 葬儀の手配・近親者への連絡
- 死亡診断書のコピーを多めに取っておく(その後の手続きで何度も必要になる)
2週間以内にやること
- 世帯主変更届を役所に提出(故人が世帯主だった場合)
- 年金受給停止の手続き(年金事務所へ。停止が遅れると後で返還を求められる)
- 健康保険の資格喪失手続き(役所へ)
- ライフラインの名義変更・解約(電気・ガス・水道・電話など)
3ヶ月以内にやること(重要)
- 遺言書の確認(公証役場・法務局・自宅保管を確認。公正証書遺言は公証役場で検索できる)
- 法定相続人の確定(戸籍謄本を集めて相続人を全員確認する)
- 相続財産の洗い出し(現金・預貯金・不動産・株・保険・車・貴金属・暗号資産など全資産をリスト化)
- 相続放棄または限定承認の手続き(必要な場合は家庭裁判所へ。この期限を過ぎると単純承認になる)
4ヶ月以内にやること
- 準確定申告:亡くなった方の、その年1月1日〜死亡日までの所得を相続人が代わりに申告する手続き。年金・不動産収入・株の売却益などがある場合に必要
10ヶ月以内にやること(最重要)
- 遺産分割協議書の作成(相続人全員で誰が何を相続するか話し合い、書面にまとめる)
- 相続税の申告・納付(基礎控除を超える場合は税務署へ。この期限を過ぎると延滞税・加算税が発生する)
- 各種名義変更(不動産・銀行口座・株など)
資産の種類別|相続税の計算方法と手続き
① 現金・預貯金
最もシンプルな資産です。亡くなった時点での残高がそのまま相続税の評価額になります。
銀行口座は、金融機関が死亡を知った時点で凍結されます(自動ではなく、遺族が連絡した時点)。凍結後は相続人全員の同意がなければ引き出せません。葬儀費用など急ぎの現金が必要な場合は、凍結前に引き出すか、仮払い制度(上限150万円)を使う方法があります。
手続きの流れ:銀行への死亡連絡 → 必要書類の提出(戸籍謄本・遺産分割協議書・印鑑証明など)→ 名義変更または解約・払い戻し
② 株式・投資信託
株式の評価額は、亡くなった日の終値(またはその月・前後の平均値の中で最も低い金額)を使います。証券会社の口座を特定し、残高証明書を取得してから相続手続きを進めます。
- 証券会社に死亡を連絡 → 相続届と必要書類を提出 → 相続人の口座へ移管または売却
- NISA口座は相続できない(課税口座に移す手続きが必要)
- 売却した場合は売却益に対して別途所得税(約20%)がかかる
③ 土地・不動産
相続税上の不動産の評価は時価ではなく「路線価」(国税庁が毎年公表)をもとに計算します。一般的に時価の7〜8割程度になることが多く、実際の売値より低く評価されます。
重要な節税特例が2つあります。
- 小規模宅地等の特例:亡くなった方の自宅を同居していた子が相続する場合、土地の評価額を最大80%減額できる。これは非常に大きな節税効果がある
- 配偶者控除:配偶者が相続する場合、1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方まで相続税が非課税
不動産の相続登記(名義変更)は2024年4月から義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと罰則(10万円以下の過料)があります。法務局で手続きします。
④ 金(地金・コイン)
金は亡くなった日の取引価格(1gあたりの金相場)×保有量で評価します。田中貴金属などの業者に問い合わせて亡くなった日の価格を確認しましょう。
- 金地金は証券会社・田中貴金属などの業者で保管している場合は残高証明書を取得
- 自宅保管の場合は「現物財産」として申告が必要(隠すと税務調査で発覚することがある)
- 売却すると譲渡所得税がかかる(所得税+住民税で約20%)
⑤ 高級時計・高級車・貴金属・美術品
これらは「動産」として相続税の対象になります。評価方法は以下のとおりです。
- 高級時計・貴金属:売買実例価額(買取業者の査定額など)で評価。ロレックスやパテックフィリップなど高額なものは必ず申告が必要
- 自動車:中古車市場の売買実例価額(中古車査定サービスなどで調べる)
- 美術品・骨董品:専門家(鑑定士)の評価額を参考にする
申告漏れが多いジャンルですが、税務調査では自宅内の動産も確認されます。価値が高いものは必ず申告しましょう。
⑥ 暗号資産(ビットコインなど)
2024年以降、暗号資産を持つ高齢者も増えてきており、相続の場面で問題になるケースが増えています。
評価方法:亡くなった日の取引所の取引価格 × 保有数量で日本円に換算します(国内の主要取引所が公表している価格が基準)。
- 取引所(コインチェック・ビットフライヤーなど)に相続手続きを連絡し、残高証明書を取得する
- IDやパスワードがわからない場合でも、まず取引所に相談する(税務署への照会権限がある)
- ウォレット(自己管理)に保管されている場合:秘密鍵がわからないと事実上取り出せない。生前に家族に伝えておくことが非常に重要
注意:暗号資産特有のリスク
ビットコインなどは価格変動が激しく、相続税は「亡くなった日の価格」で計算されますが、申告・納付するころには価格が大幅に下がっている可能性があります。最悪の場合、売却しても税金を払えない事態になりかねないため、早急に税理士に相談することを強くおすすめします。
⑦ 生命保険金・死亡退職金
生命保険金は相続財産ではありませんが、「みなし相続財産」として相続税の対象になります。ただし、非課税枠があります。
非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
例えば相続人が3人なら1,500万円まで非課税。死亡退職金も同じ計算式で非課税枠があります。受取人が指定されている保険は、遺産分割の対象にならず受取人のものになります。
相続税の計算方法をシンプルに解説
具体例で理解する
【例】父が亡くなり、相続人は母・子ども2人(計3人)。遺産は以下のとおり。
- 預貯金:2,000万円
- 自宅(土地・建物):評価額3,000万円(小規模宅地特例適用後)
- 株式:500万円
- 合計:5,500万円
基礎控除:3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
課税遺産総額:5,500万円 − 4,800万円 = 700万円(これに対して相続税がかかる)
さらに母(配偶者)が相続する場合は配偶者控除が使えるため、実際にはほぼゼロに近くなるケースが多いです。このように、一見大きな遺産でも、特例を活用すれば相続税の負担はかなり軽減できます。
相続税の税率(課税遺産総額に応じた税率)
- 1,000万円以下:10%
- 3,000万円以下:15%(控除額50万円)
- 5,000万円以下:20%(控除額200万円)
- 1億円以下:30%(控除額700万円)
- 2億円以下:40%(控除額1,700万円)
- 3億円以下:45%(控除額2,700万円)
- 6億円以下:50%(控除額4,200万円)
- 6億円超:55%(控除額7,200万円)
揉めないための生前対策
今すぐできる準備5選
- ① 遺言書を作る:公正証書遺言が最も確実。費用は数万円程度。「誰に何を残す」を明確にしておくことが、兄弟間のトラブル防止に最も効果的
→遺言書の民法が変わりました(2026年4月)法務省HP - ② 財産目録を作る:預金口座・証券口座・不動産・保険・暗号資産などを一覧表にまとめて家族が見える場所に保管しておく
- ③ 生前贈与を活用する:年間110万円以内の贈与は非課税(暦年贈与)。ただし相続開始前7年以内の贈与は相続財産に持ち戻されるため注意が必要
- ④ 生命保険を活用する:「500万円 × 相続人の数」の非課税枠を使いながら、現金を子どもに残せる
- ⑤ 暗号資産・デジタル資産の情報を家族に伝える:取引所名・ID・パスワード・ウォレットの秘密鍵を、信頼できる家族に伝えておく(または「エンディングノート」などに記録する)
【一覧表】資産別・相続税の評価方法と手続き先まとめ
| 資産の種類 | 相続税の評価方法 | 主な手続き先 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 現金・預貯金 | 残高そのまま | 各金融機関 | 死亡連絡で口座凍結。早めに葬儀費用を確保 |
| 株式・投資信託 | 亡くなった日の終値など(最も低い値) | 証券会社 | NISA口座は相続不可(課税口座へ移管) |
| 土地・建物 | 路線価(時価の7〜8割程度) | 法務局(登記)・税務署 | 小規模宅地特例で最大80%減額可。登記は3年以内に義務 |
| 金(地金・コイン) | 亡くなった日の金相場×保有量 | 業者(田中貴金属など)・税務署 | 自宅保管分も申告必須。売却益に約20%の税 |
| 高級時計・貴金属・車 | 売買実例価額(査定額) | 買取業者(査定)・税務署 | 申告漏れが多い。税務調査で発覚するリスクあり |
| 美術品・骨董品 | 専門家の鑑定評価額 | 鑑定士・税務署 | 価値の判断が難しい場合は専門家に依頼 |
| 暗号資産(ビットコイン等) | 亡くなった日の取引所価格×保有量 | 各暗号資産取引所・税務署 | 価格変動リスク大。秘密鍵不明の場合は取り出せないリスクあり |
| 生命保険金 | 受取金額(500万円×相続人数まで非課税) | 保険会社 | 受取人指定があれば遺産分割の対象外 |
| ゴルフ会員権・リゾート会員権 | 取引相場のある場合は売買実例価額 | 各施設・仲介業者 | 価値がゼロの場合もあるため確認が必要 |
【期限別チェックリスト】やることまとめ
| 期限 | やること | 手続き先 |
|---|---|---|
| 7日以内 | 死亡届の提出・火葬許可証の取得 | 市区町村役場 |
| 14日以内 | 年金受給停止・健康保険資格喪失・世帯主変更 | 年金事務所・役所 |
| 3ヶ月以内 | 遺言書確認・相続人確定・相続放棄の判断 | 公証役場・家庭裁判所 |
| 4ヶ月以内 | 準確定申告(故人の所得税申告) | 税務署 |
| 3年以内 | 不動産の相続登記(義務化) | 法務局 |
| 10ヶ月以内 (最重要) |
遺産分割協議・相続税の申告と納付 | 税務署(申告) 各金融機関(名義変更) |
どこに相談すればいい?専門家の選び方
相談内容別・頼るべき専門家
- 相続税の計算・申告:税理士(相続専門の税理士が理想)
- 遺産分割でもめた場合・遺言の無効を争う場合:弁護士
- 不動産の名義変更(相続登記):司法書士
- 内容証明の作成・手続き代行:行政書士
- まず何でも相談したい:法テラス(0570-078374、無料相談あり)または市区町村の無料法律相談
まとめ
遺産相続は「複雑でよくわからない」という印象がありますが、順序よく、期限を守りながら進めれば必ず解決できます。この記事で伝えたかった最も大切なことは以下の5点です。
- 相続税がかかるかどうかは「基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)」を超えるかどうかで決まる
- 土地・保険・暗号資産などあらゆる資産が相続税の対象。申告漏れは税務調査でバレる
- 3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月という期限を必ず守る
- 小規模宅地特例・配偶者控除など、使える特例を活用すると税額が大幅に変わる
- 生前から遺言書・財産目録・デジタル資産の情報共有をしておくことが最大の揉めない対策
法改正や税制変更の情報が入り次第、この記事も随時更新していきます。具体的な手続きについては、必ず税理士・司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。
※本記事は2026年4月時点の税制・法律に基づいた参考情報です。個別ケースへの対応は専門家にご確認ください。
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