定年後にローンが残る人は5人に1人!残りやすいローンの実態と退職金の正しい使い方
「定年したらやっと自由になれる」と思っていたのに、住宅ローンがまだ残っていた――そんな状況に直面する人が、今の日本では決して少なくありません。金融広報中央委員会のデータによると、60代の5人に1人が住宅ローンを抱えており、残高の平均は920万円にのぼります。
しかも問題なのは住宅ローンだけではありません。カーローン・リボ払い・教育ローンなど、定年後にじわじわと家計を苦しめるローンは複数あります。この記事では、定年後に残りやすいローンの種類と実態、退職金の正しい使い方、そして今からできる対策を、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。
📋 あわせて読みたい:定年後のローン問題は、亡くなったあとの相続問題にも直結します。ローンが残ったまま亡くなった場合、その処理は相続人が引き継ぐことになります。
→「【完全版】遺産相続でやること全部まとめ|この順序でやれば間違いない!資産別の税金と手続き一覧」も参考にしてください。
なぜ定年後にローンが残るのか?3つの根本原因
① 家を買う年齢が遅くなっている
国土交通省の調査によると、マイホームを初めて購入する人の平均年齢は約40.8歳です。40歳で35年ローンを組むと、完済は75歳。定年(65歳)を10年も超えてしまいます。晩婚化・子育て費用の増加・賃金の伸び悩みなどが重なり、家を買うタイミングが後ろにずれた結果、老後もローンが続く構造が生まれています。
② 退職金が想定より少なくなっている
「退職金で一括返済すれば大丈夫」と思っていた方も多いでしょう。しかし現実は厳しく、大卒・定年退職者の平均退職金は1997年の2,871万円から2018年には1,788万円へと約1,000万円も減少しています。住宅ローンを完済できても老後資金が残らない、または完済すら難しいというケースが増えています。
③ 再雇用後に収入が大幅に下がる
60歳以降も働けるようになりましたが、再雇用制度を導入している企業が約7割を占め、多くの場合は「嘱託・パート・契約社員」として雇用形態が変わります。定年後の収入は現役時代の6〜7割程度になるのが一般的で、毎月のローン返済が重い負担に変わってしまいます。
定年後に残りやすいローン、4つのタイプ
① 住宅ローン(最も多い・最も金額が大きい)
定年後に残るローンの中で、圧倒的に多くの人が抱えているのが住宅ローンです。
- 60代の住宅ローン残高:平均920万円(金融広報中央委員会)
- 70代以上でも平均816万円残っているケースがある
- 住宅ローンの完済年齢は平均73歳に(この20年で5歳上昇)
- 変動金利を選んだ場合、近年の金利上昇で返済額が増えるリスクもある
【具体的な事例】
Aさん(55歳・会社員)は40歳のときに3,000万円・35年ローン(金利2%固定)で家を購入。月々の返済は約10万円。60歳(定年)時点で残高は約1,500万円、65歳でも約1,000万円が残る計算。退職金は1,900万円の見込みだが、完済すると老後資金がほぼゼロになる状況に直面している。
② カーローン(意外と残りやすい)
自動車の購入時に組んだカーローンも、定年後まで残るケースがあります。特に50代後半に新車を購入した場合、5〜7年ローンで組むと65歳前後まで残ることになります。
- カーローンの金利は住宅ローンより高め(年2〜8%程度)
- 月々3〜5万円の返済が続くと、年金生活に入った際の負担が大きい
- 車の価値はローン残高より早く下がるため、売却しても解決しないことがある
③ リボ払い・クレジットカードの残債(気づきにくい危険)
リボ払いは「毎月の支払いが一定で便利」という印象がありますが、実態は非常に高金利(年15〜18%が一般的)の借金です。定年後も気づかないまま高金利の残債を抱えているケースが多く、老後の家計を静かに圧迫します。
- 例:残高50万円・金利15%でリボ払いの場合、毎月1万円返済しても完済まで約6年、利息は約23万円
- 収入が減っても「便利だから」と使い続け、雪だるま式に残高が増えるリスクがある
- 定年前に必ず残高を確認し、繰り上げ返済を優先すべき
④ 教育ローン(子どもが遅く生まれた場合)
晩婚・高齢出産の増加により、50代で子どもの大学費用を抱えるケースが増えています。子どもが18歳のとき親が50歳であれば、大学4年間の費用を教育ローンで賄った場合、返済が定年後にかかることもあります。
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫)の金利は固定で年2%前後(比較的低め)
- 民間の教育ローンは金利が高くなるケースも
- 住宅ローンと教育ローンが重なる「ダブルローン」世帯も珍しくない
退職金の「正しい使い方」と「やってはいけない使い方」
退職金で即・全額返済は本当に正解?
「退職金が入ったら住宅ローンを一括返済しよう」と考えている方は多いでしょう。しかし、これが必ずしも正解とは言えません。
大卒・定年退職者の平均退職金は約1,788万円(2018年時点)。仮に住宅ローンが1,000万円残っていたとすると、一括返済後に残るのは788万円。老後の夫婦2人の生活費は月に約23〜25万円かかると言われており、788万円では3年足らずで底をつく計算になります。
退職金の賢い3つの使い方
- 全額返済ではなく「一部繰り上げ返済」で残債と月額を減らす:残りを老後資金として手元に置く。月々の返済負担を下げつつ老後資金を確保できる
- ローン金利と運用利回りを比較する:住宅ローン金利が1%以下の場合、繰り上げ返済より低リスクな運用(定期預金・国債など)の方が有利なケースもある
- リボ払いや高金利ローンを優先して返済する:金利15%超のリボ払いが残っている場合は、住宅ローンより先にこちらを完済するのが合理的
絶対にやってはいけないNG行動
- 退職金を全額ローン返済に使って老後資金をゼロにする:医療費・介護費など予期せぬ出費が来たとき対応できなくなる
- 退職金を焦って投資に回す:「増やそう」と慌てて投資信託・不動産投資などに手を出すのは高リスク。定年後に損失が出ると取り戻せない
- 苦しいからといって滞納を放置する:住宅ローンの滞納が続くと「期限の利益の喪失」となり、一括返済を求められ、最終的には競売になる
定年後にローンが残ったら取れる5つの対処法
① 借り換え・条件変更で月々の負担を下げる
現在のローンより低い金利のローンへ借り換えることで、月々の返済額や総利息を減らせます。目安として現在のローンとの金利差が1%以上あり、残高が1,000万円以上・残返済期間が10年以上であれば借り換えのメリットが出やすいです。
また銀行に相談して「返済条件変更(リスケ)」を申し出ることで、月々の返済額を一時的に減額してもらえる場合もあります。
② 繰り上げ返済で期間を短縮する
定年前にまとまった資金(ボーナス・退職金の一部など)を使って繰り上げ返済を行い、完済時期を早める方法です。「期間短縮型」を選ぶと、残りの期間に払うはずだった利息ごと削減できるのでお得です。
③ 再雇用・継続就業で返済を続ける
定年後も再雇用・再就職などで収入を確保し、ローン返済を継続する方法です。ただし収入は現役時代の6〜7割程度になることを前提に、無理のない返済計画を立て直す必要があります。
④ リバースモーゲージを活用する
自宅を担保に金融機関からお金を借りて生活費・ローン返済に充て、亡くなった後に自宅を売却して一括返済する仕組みです。自宅に住み続けながら資金を調達できるのが最大のメリットです。
- 利用条件:原則60〜65歳以上・持ち家(戸建て中心)・ある程度の不動産価値がある
- 注意点:不動産の価値が下落すると融資上限を超えるリスクがある。配偶者が残る場合の扱いを事前確認すること
- 重要:リバースモーゲージを利用すると、亡くなった後に自宅が売却されるため、子どもへの相続資産が減ることになる。家族と事前によく話し合う必要がある
⑤ 売却またはリースバックで住み続ける
自宅を売却して住宅ローンを完済し、売却後は同じ家を賃貸として借り続ける「リースバック」という方法もあります。住み慣れた家を離れずに、ローンの重荷だけを下ろせるのが特徴です。
- 売却価格がローン残高を上回る場合(アンダーローン)のみ通常売却が可能
- 売却価格がローン残高を下回る場合(オーバーローン)は「任意売却」という形で処理する
ローンが残ったまま亡くなった場合、どうなる?
定年後にローンが残ったまま亡くなった場合、そのローンは相続人(子どもや配偶者)に引き継がれます。これは住宅ローンに限らず、カーローン・リボ払いの残債なども同様です。
ただし、住宅ローンには「団体信用生命保険(団信)」が付いているケースがほとんどで、加入していれば死亡時にローンが全額返済されます。ただし高齢になると保険が切れているケースや、団信に加入できていないケースもあるため確認が必要です。
また、相続人がローンを引き継ぎたくない場合は「相続放棄」という選択肢もありますが、プラスの財産(預貯金・不動産など)も一切受け取れなくなります。
⚠️ ローンを残したまま亡くなると相続人が困ります
住宅ローンの残債・リボ払い・カーローンはすべて「マイナスの遺産」として相続人に引き継がれます。遺産相続の全体の流れや、相続放棄の手順については下記の記事で詳しく解説しています。
→「【完全版】遺産相続でやること全部まとめ|この順序でやれば間違いない!資産別の税金と手続き一覧」
今すぐできる!定年前の「ローン棚卸し」チェックリスト
定年が近い方は今すぐ、自分が抱えているすべてのローンを書き出してみましょう。「見える化」するだけで次の行動が見えてきます。
- □ 住宅ローンの残高・完済年齢・金利タイプを確認した
- □ カーローンの残高と完済時期を確認した
- □ クレジットカードのリボ払い残高を確認した
- □ 教育ローンや消費者ローンが残っていないか確認した
- □ 退職金の見込み額を会社に確認した
- □ 年金の見込み額を「ねんきんネット」で確認した
- □ 定年後の月収(年金+再雇用収入)と月々のローン返済額を比較した
- □ 住宅ローンに団体信用生命保険が付いているか確認した
【一覧表】定年後に残りやすいローンの比較
| ローンの種類 | 残りやすい理由 | 目安の金利 | まず取るべき対応 |
|---|---|---|---|
| 住宅ローン | 40代での購入+35年返済が一般化 | 変動0.3〜1% 固定1〜2%程度 |
残高・完済年齢・団信の確認。借り換え・繰り上げ返済を検討 |
| カーローン | 50代後半の車買い替えで定年後まで残る | 年2〜8% | 定年前に完済を目指す。無理なら繰り上げ返済で期間短縮 |
| リボ払い | 高金利のまま残高が増え続ける | 年15〜18% | 最優先で完済。住宅ローンより先に処理すべき |
| 教育ローン | 晩婚・高齢出産で子の大学時期と定年が重なる | 年1.5〜4% | 完済時期と退職金の受取時期を照らし合わせて計画 |
| 消費者ローン | 生活費の補填で借りたまま放置しがち | 年4〜18% | リボ払いと同様に最優先で完済 |
まとめ
定年後にローンが残ることは、今の日本では「珍しいこと」ではなく「当たり前のこと」になっています。60代の5人に1人が住宅ローンを抱え、完済年齢の平均は73歳。定年を迎えてからローンに悩む人は、これからも増え続けるでしょう。
だからこそ大切なのは、定年前に「ローンの棚卸し」をすることです。何がいくら残っているのかを把握するだけで、退職金の使い方・借り換えの判断・老後の収支計画が一気に見えてきます。
- リボ払いなど高金利のローンから先に完済する
- 退職金は全額ローン返済に使わず、老後資金を残す
- 払えなくなりそうなら早めに銀行や専門家に相談する
- ローンが残ったまま亡くなった場合の相続への影響も把握しておく
老後の住まいとお金の問題は、一人で抱え込まず早めに動くことが最大の解決策です。定年後のローン問題に関する法律・税金の変更情報が入り次第、この記事も随時更新します。
※本記事は2026年4月時点の情報をもとにした参考記事です。個別のケースへの対応は、ファイナンシャルプランナー・銀行・弁護士などの専門家にご相談ください。
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