努力義務を破ったら捕まるの?

2023年の4月1日から自転車を運転する際に
ヘルメットの着用が努力義務化されます。

新しい法律が作られましたが、そもそも
「努力義務」
定義がよくわからない、という声を聞きます。

特に大都市圏では、通勤通学で自動車より
圧倒的に自転車に乗る方が多いかと思います
ので結構切実な問題かもしれません。

日本語の解釈によって、さまざまな意味に
取られる心配もありますので、「努力義務」を
わかりやすく要約してみました。

 

自転車ヘルメットの努力義務とは

 

日本の法律では、13歳未満の児童が自転車に
乗る際にヘルメットを着用することが義務
付けられてるという認識がありますが、
これも正確ではありません。

正確には、道路交通法では以下のように
定められています。

(児童又は幼児を保護する責任のある者の
遵守事項)
第六十三条の十一
 児童又は幼児を保護
する責任のある者は、児童又は幼児を
自転車に乗車させるときは、当該児童又は
幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう
努めなければならない。
これはつまり

「ヘルメットを着用していなかった場合、
何らかの事故が起きた場合、親の責任になる
場合があるので、着用させるように務めて
ください。」

ということになります。
また、この法律が2023年の4月1日から

道路交通法 第63条の11

第1項

自転車の運転者は、乗車用ヘルメットを
かぶるよう努めなければならない

第2項

自転車の運転者は、他人を当該自転車に
乗車させるときは、当該他人に乗車用
ヘルメットをかぶらせるよう努めなければ
ならない。

第3項

児童又は幼児を保護する責任のある者は、
児童又は幼児が自転車を運転するときは、
当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットを
かぶらせるよう努めなければならない。

となります。
「務めなければならない?」
ここが結構キモの部分なのに、法律って
文章の理解の仕方によっては、
「100%守らなきゃいけない義務」なのか、
そうでないのか曖昧ですね。

そうです、日本の法律って結構曖昧なんです。
でも「務めなければならない」というのは、
「絶対に守らなければいけない」ということ
ではありません。

努力義務を破ったら捕まる?

皆さんが知りたいのは

「そもそも捕まるのか」

ということだと思います。

結論から言うと、

捕まらないです!

今回4月から改正道路交通法で定められる
「自転車乗車時のヘルメット着用努力義務」
ですが、被っていなくても法律違反ではありません!

もう少し説明を付け足すと、努力義務を
怠った場合(破った場合)でも、それ自体が
法律違反となるわけではありません。

着用しなかったこと自体は法律違反とは
なりませんが、万が一事故が発生し、
ヘルメットを着用していなかったことが事故
の原因(の一つ)とされ、法的責任を
問われることがあります。

したがって、自転車に乗る際には、
ヘルメットを着用することが望ましい
と言うわけですね。

以下に例をまとめてみました。

例1、事故を起こした場合

ヘルメットを着用せずに自転車に乗っていて
何らかの事故が起きた場合(起こした場合)
安全性を確保するための最大限の努力を行わ
なかったと言うことになり、事故を起こした
本人が責任を負う可能性があります。

例2、怪我をした場合

新品の自転車に初期不良箇所などがあって、
走行中に転んで怪我をしてしまった際、
ヘルメットをつけていなかったら、慰謝料
の請求を自転車メーカーに請求しても、
棄却される可能性もあると言うことですね。

例3、警察に呼び止められた場合

自転車乗車時にヘルメットをしていなくて、
警察官に止められた場合、注意くらいは
受けるかもしれませんが、違反ではないので
そのまま乗車しても問題ありません。

自転車用ヘルメットの補助金制度

自治体によってはすでに申請を受け付けて
いたりしますが、今回の法改正によって
自転車用ヘルメット購入に際して補助金が
出ることがあります。

ご自分の地域の市区町村役場や、ネットなど
「〜市ヘルメット補助金」などで検索して
みましょう。

3,000円くらいから補助金が出る場合もある
ので、家族が多い家庭などには助かりますね。

 

そもそもどうしてこの法律が作られたのか

この道路交通法が定められたのには様々な
要因があります。

基本的な怪我の予防対策から、今後の日本の
交通環境などに合わせていたりするようです
ので、予想も交えて順に見ていきましょう。

事故被害防止のため

自転車は道路交通法では軽車両に位置付け
られていて、「車のなかま」
と定められて
います。

最近は、技術の発展によって自動車並みの
スピードが出るものや、電動アシスト付き
自転車はかなりの重量があるものが出ています。

東京を中心とした大都市圏では、自転車を
乗用する割合が年々増えてきていて、それに
伴い事故件数もかなり増えています。

スピードを出した状態で、転倒するなどの
事故では、頭部の怪我が圧倒的に多いことも
統計として出されています。

そのため、交通事故による致死率軽減、被害
防止の措置の一環として、ヘルメット着用
義務が設けられました。

引用:警視庁HP https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/helmet.html
引用:警視庁HP https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/helmet.html

 

事故の責任の所在を明確にするため

今までの法律では、自転車乗車中に走行中の
自動車とぶつかった場合には、ほとんどの
場合、自動車側が圧倒的に悪いという認識で、
自転車側の責任は追及されないことが多くありました。

今回の道交法改定によって、こういった場合に、
ヘルメットを着用していない自転車側にも
責任が出てくる可能性があります。

もし裁判ともなれば、弁護士側は絶対にそう
いったことを突いてくる筈ですしね。

「怪我をしてかわいそうだけど、ヘルメット
つけてなかったので、努力義務してませんで
したよね?」

となるかもしれないんです。

保険屋さんも、できる限り賠償金は払いたく
ないので、自転車側の責任追及をしてくる
ことは目に見えていますね。

日本人高齢化のため

今の日本では、最大の問題として少子高齢化
が挙げられます。

高齢者の自動車運転ミスのよる事故も年々
増えています。

それは自動車だけではなく、自転車も同様
です。

力のない人でもスピードが出る電動アシスト
付き自転車が開発されてから10年以上経ち、
高齢者の多くが乗車しています。

人間誰もが歳をとるのだけは避けられない
ですし、加齢すれば判断力が鈍ります。

つまり事故が起きやすい状況が増えるという
ことなので、対策としてヘルメットを被る
という法改定がされたようですね。

自動車の自動運転化に先駆けた法整備のため

現在世界先進各国で自動車の自動運転化に
向けての法整備が着々と進められています。

日本でも、一部の空港などで自動運転化
された車両などが走っていますし、近い将来
レベル5と言われる、完全自動運転化になる
可能性もあります。

自動運転技術はレベル1〜5までの5段階で
定義されていて、現在レベル3の
条件付き自動運転」の車両も出てきています。

レベル3:条件付き自動運転 一定の状況下で、車両が自動運転を行う。
ドライバーは緊急時に介入することができますが、普段は運転操作をしなくても良い。
これが次のレベル4となると、ドライバーが
いない車輌が出てきます。

革新的技術が世に出る時には、どんなに
テストを行なっても、突発的な事故や
ミスを100%防ぐことはできません。
そんな将来的に必ず実現されるであろう
自動運転技術を前に、道路交通法の擦り
合わせは必須となります。
レベル5:完全自動運転 車両が全ての運転を自動で行う完全自動運転です。
ドライバーの介入が不要で、乗車者は完全に自由に過ごすことができます。
自転車のヘルメット着用努力義務は、そんな
自動運転化に先駆けた法整備の一つでもある
ということですね。

当たり前ですが、今後同じような法改定は
どんどん出てきますね。

自転車事故による医療費や介護費などの社会的負担が大きいこと

その他の要因として、日本が抱えている
医療費切迫の問題の対策の一つも挙げられ
ます。

警視庁、警察庁の統計ですが、交通事故の
約46%が自転車を絡んだ事故となっています。

それに伴って総務省のデータで、自転車事故
による医療費や介護費、損害賠償金などの
社会的負担総額は、年間で2,500億円以上に
上ると推定されています。

また、厚生労働省によると、自動車事故や
自転車事故による損害保険支払額の内訳で
は、自転車事故による支払額が大きな割合を
占めています。

以上のように自転車事故での怪我で医療費の
負担がかなり切迫していて、最近では
ニュースのネタに
「税金や医療費負担の課題」なんていう言葉
もよく聞くようになりました。

また、今回のコロナのような世界的感染症に
よる病床の確保などに影響する可能性もあります。

つまり重大な怪我を減らすことで、医療費や
病院の負担を減らして防ぎきれない感染症
などに必要な、医療従事者や病床の確保を
促そうという目的も多少はあるのかもしれませんね。

 

まとめ

今回は2023年4月1日から法改正される
道路交通法「自転車ヘルメットの着用努力
義務」に関して、守らなかったらそもそも
法律違反なのかどうかを要約してみました。

結果としては、違反にはなりませんし、
着けていなかったということだけで
捕まったり、罰金の対象になることはあり
ません。

ただし、自転車事故は年々増えていますし、
頭部による重大な怪我につながる場合もある
ので、できる限り装着するよう心がけたほう
がいいですね。

「自分だけは大丈夫」と思ったら、もうその
時点で購入を考えたほうがいいかもしれません。